顔に片栗粉を塗った私
夜間勤務では、いろんなサプライズがあります
職場は特養ですから
時には泣きたくなるような場面に遭遇することもありますが
ほとんどが、笑える話です。
夜間の時にしか担当しないおばあちゃんがいます。
彼女には認知症はありません。
しかし、とても話が長い(クドイ)のです
夜間の見回りで彼女の部屋を覗くと・・・
『 あらぁ~mahalちゃん、来るの待ってたよ~
ひとまわりしたら、戻っておいで
何も無いけど、干しイモでも食べながらお話しましょう 』
ムムム・・・彼女に捕まったら
ナースコールが鳴らない限り、永遠に捕まってしまう・・・
しかし、話し相手をしてあげるのも私の仕事・・・
覚悟を決めて、彼女の部屋へ行きました。
この夜のテーマは、お化粧についてでした。
『 女性が化粧するのは殿方を魅了するだけの理由ではないんだよ 』
女性の化粧は身だしなみなのよ。
化粧しないで人様の前に出るのは
下着をはいていないのと同じくらい恥ずかしい事なの 』
彼女は90近い年齢ですが
毎朝1時間ほど鏡の前で化粧水をつけたり
眉を書いたりしています。
『 なのにmahalちゃんときたら、なんなのその顔
汗でテカテカしているじゃないの!!』
『 だって、夜中だし・・・』
『 夜中だろうが
人前に顔を出す時はオシロイくらいつけていらっしゃいよ 』
『 はい、わかりました・・・』
この時、グッドタイミングでナースコールが鳴りました。
『 ごめんなさい、呼ばれたからまた後でね 』
『 早く行っておあげなさい。仕事が終わったらまたおいでよ 』
『 は~い 』
『 またおいでよ 』 と言う言葉に『 はい 』と返事をしたのは失敗でした。
お年寄りにごまかしは通用しないのです。
彼女は次の見回りの時間まで起きて待っていました。
この時は、さらに
『 まぁ~、今度は髪までボサボサじゃないの 』
『 だって~、忙しくて走り回ってきたから・・・ 』
『 私のヘアーブラシがあるから髪の毛、とかしなさいな 』
この後、彼女のお化粧についての話が延々と続きました。
『 ○○さん、もう夜中だから寝てください。
具合が悪くなりますよ 』
『 でもねぇ、mahalちゃんのテカテカの顔をどうにかしないと
落ち着いて寝られないよ 』
『 わかりました、今オシロイ塗ってきますね!! 』
オシロイなんか持っていない私は
いい事を思いつきました
厨房へ行って、片栗粉を顔に叩いたのです。
(もちろん、うっすらとです。志村ケンのバカ殿とは違います)
『 ○○さん、オシロイつけてきたよ 』
『 あらぁ~、やっぱり見違えるように可愛いね
やっぱり、女は化粧だよ 』
片栗粉を塗って誉められた私って・・・