帰国
それは突然の報告でした。
『僕は転勤でフィリピンへ帰国する事になりました』
その頃、私にとって…
大切な友人になっていた男の子が帰国するのは
とても淋しい出来事でした。
これが国内の転勤なら
そんなにショックを受けなかったのかもしれませんが
なかなかVisaがおりないフィリピンとなると
もう二度と会えないかもしれない…という気持ちでした。
そんな私に…
『 貴方の子供達もいつかは親元から離れていくでしょう
今は、その練習だよ』
ホントだ…
近い将来、子供達が巣立つ時またこの淋しさを味わうんだ。
人との出会いや別れは人生を送る中で当然やってきますが
できることなら、愛する人や愛しい人は
いつまでも自分のそばにいて欲しい。
そんなワガママな考えだった自分に気が付きました。
帰国の日には…
『 日本からフィリピンまで4時間だよ。あっという間ですよ』
そんな言葉を残して、
私の人生観を変えた不思議な男の子は
飛び立っていきました。
だんだんと空に溶け込んいく飛行機を
溢れる涙を拭きながら見送りました。
でも、いつまでも悲しんでいてもしかたない…
4時間でフィリピンへ行けるのだし
死んじゃったわけでもないのだし
機会があれば、またいつか会える。
会えなくても、日本で彼の幸せを祈る事はできる。
そんなふうに、自分を励ましました。
それから約1年後…
とうとう憧れのフィリピンへのチャンスが巡ってきました。